昔は至るところに名画座と呼ばれる映画館があった。
古い秀作を安く提供するのである。
おかげで「ローマの休日」はもう何十回見ただろう。
学生時代に東銀座にあった「銀座ロキシー」に毎日のように通ったものだ。
一日過ごした。
ヘップバーンの美しいことといったらなかった。
グレゴリーペックもまたかっこいいを過ぎている。
モノクロのフィルムだが、美しい映像。胸を締め付けられながらスクリーンを眺めていた。
昔はこんな名画がたくさんあった。
「地上(ここ)より永久に」もそうだ。「誰がために鐘は鳴る」もそうだ。「街の灯」などは、あの「あなたでしたの・・・・?」というラストシーンを思い出しただけで切なくなる。
田舎から出てきたさみしさもどこかにあったのかもしれない。
とにかく映画づけになった時期だった。
ロードショーははしごした。
映画雑誌は買いまくった。
ラジオの論文懸賞に応募して佳作を得た。
今でも覚えているが「エレファントマンはなぜヒットしたか」という論文テーマだった。
ラジオで名前が呼ばれたときは小躍りした。
映画会社に入ろうかと真剣に思った。
映画好きの血が今息子に継がれている。
その息子の書いた映画評論を読んでみた。
我が子だと思った。