初めてわが子が生まれた時。
それまで血のつながった二人の赤ん坊がともに姪っ子だったことから、何故か我が子も女の子と思いこんでいたがそうではなかった。
思い込みの分だけ長男誕生にすこしの戸惑いがあった。
しかし日が経つにつれ男を産んでくれた女房に感謝の気持ちが募っていった。
子供持つ親の気持ちとはこういうものか。生まれて初めての感情が湧いた。
ある晩に川の字で寝ていたら突然揺れ出した。大きな地震だと思う前に体は反射的に隣の息子に覆いかぶさっていた。
本能である。
何の迷いもなく、飛び掛かるように被さったのである。
暗闇の中で女房と目があった。守ったのが息子であり、女房ではなかったことになぜか申し訳ない気持ちになった。
本能だから仕方ない。
住んでいたのは線路沿いのアパートだった。
休みの日は息子と二人して、走る列車の運転士に手を振った。
そうすると必ずと言っていいほど、汽笛をならし応えてくれた。
大人の自分でもうれしくなった。そこに住んだのは2年あまりだった。
そして娘が生まれた。息子が喘息となり郊外への引っ越しを余儀なくされた。
目の前にクリニックの立地する場所に居を構え、スイミングスクールに通わせたら完治した。
15年前の話である。
あの頃は子供成長そのものが人生だった。どんなことがあっても一生かけて守り抜こうと思った。
今、守ってあげられているのだろうか。
こんな非力な親父をどう思っているのだろうか。
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